テクノロジー研究・解析

高減衰ゴムの可能性をさらに拡大

高減衰ゴムや制振技術のさらなる進化と、広く一般に普及させることを目指して、大学の研究機関との共同研究を実施、さまざまな分野への実用化が進んでいます。

ビル用ダンパーは公的証明を取得しています

住友ゴムのビル用高減衰ダンパーは、(財)日本建築総合試験所(GBRC)にて、建築技術性能証明書を取得しています。
GBRC 性能証明 第11-30号 (2012/3)『イソプレンゴム系粘弾性体を用いた粘弾性ダンパー』 (GR4015-GR4/GR4020-GR4)』

解析モデル・解析事例

高減衰ゴムの特徴を捉えた高精度の解析モデルを作成し、汎用動的解析プログラムに搭載済みです。

最大荷重(kN)累積エネルギー(kN・mm)
実験①モデル②①/②実験①モデル②①/②
JMA Kobe2.822.822.822.822.822.82
Taft2.332.332.332.332.332.33
El Centro2.332.332.332.332.332.33

搭載ソフト一覧

SNAP((株)構造システム)、SS21/dynamic PRO、3D dynamic(ユニオンシステム(株))、MIDAS(マイダス社)
RESP-D/F3T((株)構造計画研究所)、ETABS、SAP2000(CSI社)

RC造15層建物 (26m x 15m x 45m)  主方向:X   1次固有周期: 0.86秒  入力:BCJ-L2

建物に入力された揺れのエネルギーをダンパーが消費することで、建物の歪エネルギー(=損傷)を大幅に低減

風洞実験を実施し、風揺れへの効果を検証
SRC造40層建物(36m×36m×160m)風主方向:X 設計風速:19m/s 地表面粗度区分:Ⅲ

居住性評価レベルの微小振動でも効果を発揮

性能証明GBRC11-30号

用語の定義

粘弾性ダンパーの履歴特性値を以下に示す

粘弾性ダンパー履歴ループ
粘弾性ダンパー外観写真
粘弾性ダンパーの基本原理

(1)等価剛性 Keq(kN/mm)

粘弾性体(高減衰ゴム)の非線形復元力特性を、等価な線形の復元力に置換えたときの剛性をいう。以下の式に基づき、算出を行う。

\( \text{等価剛性} \)
\( \mathrel{K_{eq} = \dfrac{Q_{max}-Q_{min}}{X_{max}-X_{min}}} \) (kN/mm)

\( Xmax \) :履歴ループの最大変位(mm)
\( Xmin \) :履歴ループの最小変位(mm)
\( Qmax \) :履歴ループの最大変位時の荷重(kN)
\( Qmin \) :履歴ループの最小変位時の荷重(kN)

(2)等価粘性減衰定数 heq

等価剛性と吸収エネルギーにより求まる減衰効果を表す指標。吸収エネルギーと歪エネルギーの面積比として以下の式で表現される。

\( \text{等価粘性減衰定数}\)
\( \mathrel{h_{eq}=\dfrac{1}{4\pi }\cdot \dfrac{\Delta W}{W}} \)

\(ΔW\) :吸収エネルギー(kN・mm)、履歴ループ内の面積
\(W\) :歪エネルギー(kN・mm)、等価剛性および最大変位と最小変位との平均から求められる三角形の面積

\( W = \dfrac{K_{eq}}{2} \cdot ( \dfrac{X_{max}-X_{min}}{2} )^{2} \)

(3)等価せん断弾性係数 Geq(N/mm2

粘弾性体(高減衰ゴム)の形状に関わらず材料の特性を示す係数で、等価剛性KeqをS/tで除いたものを等価せん断弾性係数という。

\( \text{等価せん断弾性係数} \)
\( \mathrel{G_{eq} = \dfrac{K_{eq}}{(S/t)} \cdot 1000} \) (N/mm2)

\(t\) :粘弾性体厚み(mm) \(S\) :粘弾性体せん断面積(mm2) ※性能証明説明資料より抜粋

せん断破壊特性 (T=20℃)
試験体:縮小(40×t8)変形速度V=0.1/1.0/10mm/s~

歪依存性 (振動数f=0.1Hz , 20℃)
試験体:縮小(40×t8)せん断歪みγ=±10%~±300%

※性能証明説明資料より抜粋

振動数依存性(T=20℃)
試験体:縮小(40×t8) せん断歪γ=±10%~±200% 振動数f=0.01Hz~5.0Hz

※性能証明説明資料より抜粋

振動数依存性(T=20℃)
試験体:縮小(40×t8) せん断歪γ=±10%~±200%  振動数f=0.01Hz~5.0Hz

※性能証明説明資料より抜粋

追加試験報告

建物がダンパー設置方向と直交方向に変形する場合を想定し、ダンパーの面外変形作用時の影響確認なども行っています。

試験概要:中フランジをねじって加振
試験体:実大(400×t15-2層) 振動数f=0.1Hz せん断歪γ=100%  サイクル数:4cyc

ダンパーに鉛直変形が生じた場合を想定し、ダンパーの面内直交変形時の影響確認なども行っています。

試験概要:中フランジを加振直交方向に予変形させて試験
試験体:縮小(40×t8) 振動数f=0.1Hz せん断歪γ=100% サイクル数:4c

住友ゴムの制振装置

複数の要素の組合わせにより、高減衰ゴムの性質を精度よく表現できる解析モデルを構築しています。

参考文献)
谷他、高硬度ゴム粘弾性対の極微小変形から大変形でのひずみ・振動数依存性のモデル化、学会構造系論文集、No.629、p1079-1086、2008